2014年09月02日

千々石ミゲルがイエズス会を脱会した理由とその苦悩(40)

「伴天連を少(すこし)うらむる子細有て寺を出る」とは?
人間、ミゲルの苦悩の原点とは?

不都合過ぎるキリスト教関連文化遺産とは何か(40)

九州歴史発見シリーズ
いまさら歴史認識がどうした?

東洋医学史研究会・宇田明男


 



●伴天連を少(すこし)うらむる子細有て寺を出るとは、どういうことか?


しかし彼らが8年後に帰国したとき、日本国内では大きな変化が生じていた。


すでにバテレン追放令が出され、領内での布教活動にも障害が出ていた。


そして、明確な理由も不明なまま千々石ミゲル一人がイエズス会を離れ、やがて棄教してしまうのである。
千々石ミゲルには当然、明確な棄教の理由があったはずである。


後世、それが記録として伝えられなかっただけである。


まず、冒頭で紹介した文献に残されている「伴天連を少(すこし)うらむる子細有て寺を出る」(「伴天連記」)とは、どういうことなのか。


「うらむる子細」とはキリスト教に対して、ミゲルが何らかの疑問を呈していたということではないのか。


そして、「耶蘇宗門ノ邪正ヲ探ル。則チ異悪タルコトヲ知(り)帰朝ス」(大村・「新撰士系録」)となると、いよいよそうした意味合いにより近づいてくるように思える。

(注)読売新聞:2004年8月7日〜9月18日号・「九州こだわり歴史考・棄教の果て」より文献史料引用


だとすると、そのキリスト教に関わる疑問、あるいは批判の対象というものが何であるかが問題になってこよう。
一体、棄教にまで繋がるどのような理由が、そこにはあったというのであろうか。


少なくとも、彼ら4人の少年は常に励ましあい助け合って司祭への道を目指し続けていた。
ここには通常ありそうな仲間内の感情的もつれや対立から出てきたような、それこそ個人的な勝手な事由が関わるような背景があったとは考えにくい。


それが信仰上の問題であったとしても、ここで自ら司祭への道を絶ち、棄教までするという決断に至るような重大な問題が彼らの間にあったとは普通では考えられないところである。


たとえ彼らに一時の個人的、感情的な対立があったとしても、大いなる使命感で共に行動をしてきた他の少年らが安易に千々石ミゲル一人の棄教を見過ごすようなことはなかったはずだ。


それこそ他の3人が懸命に説得し続けて、彼を引きとめようとしたはずである。


ここで時系列的に千々石ミゲルの足跡を追っていくと、帰国後に聚楽第において天下人秀吉に謁見した辺りから心情的な一つの転機があったのではないかと思えるふしがある。


ミゲルから見ると、キリスト教に対する秀吉のバテレン追放令の絶大な政治的、対外的効力の大きさというものを身近に肌で感じていたであろうし、イエズス会勢力を押さえ込むという意味では大きな脅威であったであろうが、その反面ミゲルにとっては唯一画期的に喜ばしい禁止令がそこには含まれていたように思えてならない。


それが、まさに人身売買の禁止の条項ではないだろうか。


千々石ミゲルにとってこれは大いに共感し得たであろうし、それを果敢に実施してみせた天下人としての秀吉の絶大な権力に驚きもしたであろう。


少なくとも、この禁令にはキリシタン大名らは否応なく従わざるを得なかったのだ。


おそらくこれによって、ミゲルは相当な精神的衝撃を受けたのではあるまいか。
何故ならキリスト教が容認する奴隷取引を秀吉という異教徒の王は、日本国にとってそれを悪しきものとして裁断し目の前で見事に止めさせてみせたからである。


千々石ミゲルは、このとき秀吉の持つキリスト教への怒りと猜疑心とをいくばくか共有し得たのではなかったろうか。


ここでこのように、あえてミゲル自身と奴隷取引に関わる視点から触れたのは、唐突な考えから安易に持ち出てきたわけではない。そこには、それなりの理由があると考えるからである。




●苦悩する千々石ミゲル


ここで妥当な判断をするとなるとやはり当時のミゲルは、世界にはびこる奴隷制度に繋がるその忌わしい商取引に言い知れぬ嫌悪感と抑えがたい怒りを誰よりも感じていたように思えてならない。


彼自身の輝かしい経歴の中にあっても、彼は最後までこれを払拭することができなかったのではないか。


たとえば次のような少年使節団についての関連史料があることに注目したい。

(注)「近代世界と奴隷制:大西洋システムの中で」(池本幸三/布留川正博/下山晃共著、人文書院、1995年、P158〜160から、以下引用。



 「一五八二年(天正十年)ローマに派遣された有名な少年使節団の四人も、世界各地で多数の日本人が奴隷の身分に置かれている事実を目撃して驚愕している。
『我が旅行の先々で、売られて奴隷の境涯に落ちた日本人を親しく見たときには、こんな安い値で小家畜か駄獣かの様に(同胞の日本人を)手放す我が民族への激しい念に燃え立たざるを得なかった』
『全くだ。実際、我が民族中のあれほど多数の男女やら童男・童女が、世界中のあれほど様々な地域へあんなに安い値でさらっていって売りさばかれ、みじめな賤業に就くのを見て、憐憫の情を催さない者があろうか』といったやりとりが、使節団の会話録に残されている」(引用終り)





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ここでなされている会話の主は、千々石ミゲル自身であろう。



 
『天正遣欧使節記』(デ・サンデ著/雄松堂書店) 。(p232-235 より以下、対話部分の引用開始)


レオ  ちょうどよい機会だからお尋ねするが、捕虜または降参者はどういう目に遭わされるのだろう。


    わが日本で通例やるように死刑か、それとも長の苦役か。


ミゲル キリスト教徒間の戦争で捕虜となったり、やむをえず降伏する者は、そういう羽目のいずれにも陥ることはない。
    つまりすべてこれらの者は先方にも捕虜があればそれと交換されるとか、また釈放されるとか、
    あるいはなにがしの金額を支払っておのが身を受け戻すのだ。
    というのも、ヨーロッパ人の間では、古い慣習が法律的効力を有するように決められ、
    それによってキリスト教徒は戦争中に捕われの身となっても、
    賤役を強いられない規定になっているからだ。だがマホメット教徒、
    すなわちサラセン人に属する者に対しては、別の処置が取られる。
    これらの者は野蛮人でキリストの御名の敵だから、交戦後も捕えられたまま、いつまでも賤役に従うのである。


レオ  そうすると、キリスト教徒なら、その教徒間では戦争中に捕虜となっても、
    賤役に従えという法律に拘束される者は一人もないわけだな。


ミゲル そうしたことで市民権を失った者はただの一人もない。
    それはまた今もいったように、古来の確定した習慣で固く守られている。
    それどころか、日本人には慾心と金銭の執着がはなはだしく、そのためたがいに身を売るようなことをして、
    日本の名にきわめて醜い汚れをかぶせているのを、ポルトガル人やヨーロッパ人はみな、不思議に思っているのである。
    そのうえ、われわれとしてもこのたびの旅行の先々で、売られて奴隷の境涯に落ちた日本人を親しく見たときには、 道義をいっさい忘れて、血と言語を同じうする同国人をさながら家畜か駄獣かのように、
    こんな安い値で手放すわが民族への激しい怒りに燃え立たざるを得なかった。


レオ 全日本の覇者なる関白殿Quambacudonoが裁可された法律がほかにもいろいろある中に、
   日本人を売ることを禁じる法律は決してつまらぬものではない。


ミゲル そうだ。その法律はもしその遵守に当る下役人がその励行に眼を閉じたり、
    売手を無刑のまま放免したりしなかったら、しごく結構なものだが。
    だから必要なことは、一方では役人自身が法律を峻厳に励行するように心掛け、他方では権家なり、
    また船が入って来る港々の長なりがそれを監視し、きわめて厳重な刑を課して違反者を取り締ることだ。
レオ それが日本にとって特に有益で必要なこととして、あなた方から権家や領主方にお勧めになるとよい。


ミゲル われわれとしては勧めもし諭しもすることに心掛けねばなるまい。
    しかし私は心配するのだが、わが国では公益を重んずることよりも、
    私利を望む心の方が強いのではなかろうか。実際ヨーロッパ人には常にこの殊勝な心掛けが
    あるものだから、こうした悪習が自国内に入ることを断じて許さない。(引用終わり)



そして四人の少年使節の中で、ミゲルが奴隷の扱いに対してもっとも憤慨したともとれる部分がある。
彼は周囲の西洋人に向かって激しく抗議した。


このことでミゲルは宣教師からは少なくとも危険な考えを持った人物として見られるようになる。


おそらくこうした同胞への憐憫の情は、当時の日本人にしか持ち得なかった心のうちの自然な倫理観であり、少なくとも弱者に対する素朴な哀れさであり、人間に向けられた尊厳そのものであったろう。


白人以外の異教徒を野蛮人、あるいは動物同様とみなす当時のキリスト教圏の非情な教義とは隔絶した見方をミゲル自身はひそかに持っていたのではないだろうか。


これが、ミゲルのその後の棄教と無関係ではなかったであろう。
もとより少年使節には、できるだけキリスト世界のいい面だけを見せるように配慮されていたというが、皮肉にもその航海の途中でたびたび目にしたものは痛ましい日本人の奴隷の姿であった。


この現実に直接触れたとき、ミゲルは奴隷取引に教会やイエズス会が介在し続けることをどうしても容認できなかったのではないか。


強大な教皇の権威は国王と結託し、教会やイエズス会はその保護権によって布教活動を世界に広げている。
その結果、インドやアジアはキリスト教圏によって侵略され植民地と化している。


そして異民族や異教徒は彼らによって奴隷に貶められている。
少年使節の彼らが、この事実にまったく気付かぬはずはあるまい。


まさにそこでは千々石ミゲル一人がもっとも切実に、この隠された陰謀を察知し得たということになる。











 削除されなければこの稿続く


参考資料:
「デ・サンデ天正遣欧使節記」E・デ・サンデ:著, 泉井 久之助:他訳, 長澤 信壽:他訳 発行:雄松堂書店
「近代資本主義の成立と 奴隷貿易―――― A 教皇文書と新大陸での実態の吟味 カトリック教会は奴隷貿易を容認したのではないのか」 西山俊彦 2003 カトリック社会問題研究所 『福音と社会』 211
「近代資本主義の成立と奴隷貿易―――― B 教皇文書と新大陸での実態の吟味(2) キリスト教化は奴隷化の方便ではなかったか」 西山 俊彦著 2004 カトリック社会問題研究所 『福音と社会』 第 212 号
「キリシタンの世紀」 高瀬弘一郎 岩波書店 1993
「完訳フロイス日本史」(中公文庫) ルイス フロイス (著) 松田 毅一 (翻訳) 川崎 桃太 (翻訳) 全12巻
 1 織田信長篇T「将軍義輝の最期および自由都市堺」(中公文庫,2000年1月)
 2 織田信長編U「信長とフロイス」(中公文庫,2000年2月)
 3 織田信長篇V「安土城と本能寺の変」(中公文庫,2000年3月)
 4 豊臣秀吉篇T「秀吉の天下統一と高山右近の追放」(中公文庫,2000年4月)
 5 豊臣秀吉篇U「暴君秀吉の野望」(中公文庫,2000年5月)
 6 大友宗麟篇T「ザビエルの来日と初期の布教活動」(中公文庫,2000年6月)
 7 大友宗麟篇U「宗麟の改宗と島津侵攻」(中公文庫,2000年7月)
 8 大友宗麟篇V「宗麟の死と嫡子吉統の背教」(中公文庫,2000年8月)
 9 大村純忠・有馬晴信篇T「島原・五島・天草・長崎布教の苦難」(中公文庫,2000年9月)
10 大村純忠・有馬晴信篇U「大村・竜造寺の戦いと有馬晴信の改宗」(中公文庫,2000年10月)
11 大村純忠・有馬晴信篇V「黒田官兵衛の改宗と少年使節の帰国」(中公文庫,2000年11月)
12 大村純忠・有馬晴信篇W「キリシタン弾圧と信仰の決意」(中公文庫,2000年12月)
「 日本切支丹宗門史」レオン・パジェス著  クリセル神父校閲 吉田小五郎訳 岩波文庫 昭和13年
「イエズス会による対日軍事力行使をめぐる諸問題」 高橋裕史 2006
「GHQ焚書図書開封」西尾 幹二 (著)  徳間書店 2008
「近代資本主義の成立と奴隷貿易」西山俊彦 カトリック社会問題研究所「福音と社会」2003年 10月31日 210号 掲載 第1回 課題のありか カトリック教会は双方に深くかかわって来たのではないのか
−教皇文書と新大陸での実態の吟味(2)−4月30日 213号 第4回 黒人奴隷貿易が産業革命を惹き起こし、先進諸国の隆盛(と途上諸国の衰退)をもたらしたのではないのか










「治療家・セラピストのための生体経絡・生気論」
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posted by モモちゃん at 11:47| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする