2020年07月28日

柳原白蓮が暮らした伊藤伝右衛門邸を見る

柳原白蓮と伊藤伝右衛門との確執秘話

柳原白蓮という歌人の名はそこそこ世間に知られていても、伊藤伝右衛門という名を聞いても一体どこの誰のことだか分からないと思います。

伊藤伝右衛門、武士というよりはどことなく商売人ぽい響きがあると思いませんか?

今回機会があって、九州の炭鉱王として知られていた伊藤伝右衛門の屋敷を訪れてみました。

明治、大正、昭和にかけて福岡県の筑豊地域は、石炭供給日本一として栄えた歴史があります。

当時「筑豊御三家」と呼ばれた麻生、貝島、安川に続いたのが炭鉱王といわれた伊藤伝右衛門です。

当時としては相当な財界人であり、大富豪でした。

伊藤伝右衛門は、若いころは魚の行商や船頭など職を転々としながら、赤貧生活を続けていましたが、人一倍の才覚と先見の明があってやがて父と手掛けた炭鉱事業が当時の国策の時流にも乗り、のちには“筑豊の炭鉱王”と呼ばれるまでにその事業を拡大していきました。

伊藤伝右衛門は苦労を重ねて財を成した人物でしたが、無学であり文盲同然であったといいます。

それだけに学問や文化には、格別強い憧れも持っていました。

伝右衛門は明治43年に長年苦楽を共にした妻ハルが45歳で病に倒れ他界してしまいます。

妻を失った伊藤伝右衛門は1911年(明治44年)に50歳にして、突然25歳の伯爵柳原前光の娘・Y子(あきこ−白蓮)を迎え入れる事となります。

多分にこの当時の結婚には政略的な事情も背景もあったようです。

伝右衛門にしてみれば、財力に見合った格式が必要とされていたのかも知れません。

当時としては、結婚による血縁を持つことが手っ取り早い手立てだったわけです。

筑豊という土地柄で並外れた才覚と持ち前の男気で成り上がった九州男児だけに、伝右衛門には多少粗野な部分もであったろうとは思いますが、社交的で人間的にはとても豪快な人物だったはずです。

筑豊という土地柄で、その当時はそうした男気がもっとも持て囃された時代でもありました。

事実当時の筑豊では、伝右衛門のような肝の据わった人物でなくては収拾できないような騒擾場面も度々あったのです。

大きな事業を企てる過程においての彼の経営手腕や人心把握には素晴らしいものがありました。

この地域は、彼の手によって経済的な発展の基盤が形作られたということは確かにいえると思います。



一方のY子は、柳原白蓮(やなぎはら・びゃくれん)として歌人としてその世界では有名な女性でした。

年齢差ももちろんですが、学歴や学問に縁遠い伝右衛門と歌人白蓮との組み合わせは、やはりどこかに無理があったのではないでしょうか。

結果的には二人の結婚生活はうまくいきませんでした。

ただ、伝右衛門自身はそれなりの努力はしていたように思えるところがあります。

家屋内の設備や細部の設え、調度品には可能な限り当時の最先端の物が揃えられていました。

立派な応接間の隣には、新聞記者や来客の付き人のための広い控え室までが用意されていました。

伝右衛門は、結婚に際して屋敷を整えるのに京都から腕利きの大工をわざわざ呼び寄せたといいます。

屋敷の随所にそうした心配りが見られます。

若き花嫁を迎えることになった伝右衛門が、当時の日本建築の粋を集めて改築したのがこの「旧伊藤伝右衛門邸」というわけです。

外観は立派な日本家屋ですが、天井も高くガラス窓に囲まれた洋風な造りの食堂やマントルピースのある立派な応接間もありました。

しかも庭が見渡せる2階の白蓮の部屋の傍には、当時では珍しかった水洗トイレが設置されていました。

明治末、大正初期の水洗トイレ設備ですから驚きです。

伝右衛門と白蓮は共に約10年間の時をこの地で過ごしますが、白蓮はここから波乱万丈の恋物語を展開します。

その当時、伝右衛門の屋敷は福岡や別府にもあって、状況に応じてそれぞれ使い分けていたようです。

見学した邸内には、白蓮関連の資料館も敷地内に別棟でありました。

そこで有名な白蓮の伝右衛門への絶縁状も見てきました。

当時この絶縁状は一方的に新聞紙上に公開されたもので、相当にセンセーショナルなものだったようです。

伝右衛門は白蓮に対して何の反論もしませんでした。

彼にも言い分はあったでしょうが、あえて口を閉ざしたまま男らしく耐え凌いだということになります。

伝右衛門と白蓮とは、10年間共に夫婦として暮らしても互いには精神的に満たされない想いというものが次第に生じてきます。

当事者同士にしか判らないところです。

しかも二人の間には、常に他人が介在していました。

結婚生活といっても、それは多くの使用人に囲まれた王侯貴族の生活スタイルに似ているようでした。

そこには、やり場のない不満や苛立ち、不信感、孤独感がつのっていったであろうと思われます。

その痛ましさ、そして根本的に価値観の異なる男女の間で相互の理解も尊敬も交わされず、そこにはただぎすぎすした軋轢だけが際立ってみえるという、そうした何とも言いようのない空しい情念の渦巻く世界を垣間見たように思えました。

それが、この広大なお屋敷では日々繰り返されたということになります。

とにかく広過ぎる居住空間だけが、どこまでもずっと続いているようでした。

皮肉なことですが、訪れた者が目にする豪華な造りのお屋敷は、ここではまるでそうした事象をことさら大きくして、これ見よがしに顕現化して見せてくれているようにも思えました。

物語のシチュエーションを膨らませるということでしたら、それは十分過ぎるほどのものでした。

まさにそういう意味では、ここは二人が演じた大きな劇場であり記念的建造物であったというべきかも知れません。


ここは敷地面積約7570平方メートル、建物延床面積約1020平方メートルということで、約2300坪の敷地に300坪のお屋敷ということになります。

今回は庭を中心に写真を紹介します。

屋敷の表玄関入り口部分です。

高い塀に囲まれた外観は、どこぞの大名屋敷のようでした。

玄関までずっと前庭が広がっています。



立派な門構えが目を引きます。





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庭は日本庭園でかなり広いです。

庭の中を自由に散策出来ます。

池には水はなく、一部は枯山水の様式でした。











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庭の隅々まで芝生の手入れもきれいにされています。










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庭園部分はちょっとした公園ほどの広さがあります。










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何だか隣接するビルが景観を損ないますね。







 
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縁側の前には大きな沓脱石がありました。

この大きさだと大人数でも大丈夫です。






 
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入り口から外を見たところです。
普通の民家が門の前には広がっています。
屋敷の前の道路はそれほど広くはありません。

それが意外な感じでした。
門の脇には門番用の部屋がありました。
 
  





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「花子とアン」蓮子(白蓮)の夫・伊藤伝右衛門











手紙/柳原白蓮








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ラベル:恋物語
posted by モモちゃん at 11:57| 歴史再発見 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする