2018年01月16日

「鬼平犯科帳」の軍鶏鍋は本当に旨いのか?

「五鉄」の旨そうな軍鶏鍋が喰いたい

ようやく池波正太郎の「鬼平犯科帳」全24巻(文春文庫)を読破することが出来ました。

これまでにも「鬼平犯科帳」は読んだことはありましたし、機会があれば「オール読物」に連載されている作品も何篇かその都度読んでいました。

今回はあらたまって全巻を片っ端から読み進めて見たというわけです。

30年以上以前の若い時に読んだ鬼平シリーズと比較すれば随分と違った感じがするもので、そこここに漂う独特の江戸の風情というものを今一度しっかりと味わったような気がしました。

このシリーズの中では度々食事のシーンか描かれているのですが、どれもこれも実に旨そうな料理が出されてくるのです。

これが読者にはひどく気になるのであります。





粋人








吉右衛門

 







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ラベル:シャモ鍋
posted by モモちゃん at 09:41| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月29日

ブログ記事インデックス特集(1)

店長特製のインデックス集


ラベル:特集記事
posted by モモちゃん at 09:00| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月20日

江戸市中で取り引きされた高貴薬の謎!

巷の庶民には無縁の高貴薬?

約30年前に観たテレビの番組で中国の漢方薬が紹介されていたのだが、そのなかで天然の二十年ものの薬用人参が展示販売されているところが映しだされていた。


この一本の立派な人参の販売価格が、なんと当時70万円だといっていた。

現在であれば、優に5倍以上にはなっているだろう。


一瞬唖然としたが天然資源が枯渇している現状を考えれば、その稀少価値は計り知れないとも感じた。


人参といえば朝鮮人参が有名であるが、江戸時代の吉宗の代になって初めて国産化さ れたといい、それまではすべて大陸からの輸入品に頼っていたのである。



ninjin







たとえば正倉院御物のなかに人参は含まれていたし、後に光明皇后の施薬院のためにそこから五十斤(三十キログラム)もの人参が流用されたというが、とてつもなく貴重な渡来薬物であったのだ。


時代劇にも人参は高貴薬としてよく登場する。


親の病気に薬代が嵩み、娘が泣く泣く身売りするというよくある話がそれである。


当時、それほど人参は高かったかどうか、どうしても当時の事情が知りたくなって図書館に行って調べてみたことがある。


江戸時代の天保七年に人参一斤(六百グラム〕銀三十八貫という高値があったというが、大抵は一斤が銀十六貫辺りが平均的相場だったらしい。


当時の専門技術者であった京都の大工の日当が銀三匁(江戸は五匁)、これで銀十六貫を割ると5333日分に当たる計算である。

平成元年3月34日の銀の相場でこれを計算してみたところ、大工の日当は318円、人参六百グラムは約170万円相当になる。



現在平成27年11月26日の銀の相場ではどうか。

銀が倍以上に値上がりしていて、大工の日当は720円になる。(江戸だと1200円相当)。

当時の銀の価値は日本国内での基準であって、ここでは確かな経済指標とはならないのは確かである。



ほかの物価と換算した場合は、江戸時代は現在より銀の価値が2〜3倍になるのでさらに人参の薬価そのものは高くなってしまう。


たとえば通説に従って一両を現代の3万円と換算すると、大工の日当は1500円、人参一斤は8百万という感覚であろうか。


とにかく現在の経済感覚で単純に計算したところで正確な数値が出てきはしないが、 それでもこの驚くべき価格には現代人でもおおよそ感覚的には察しが付くというものである。


物価が上がるのは需要と供給に関係があるということぐらい、経済オンチの私にも分かる。


円安だと、今も昔も同様に海外からの舶来品は当然高くなる。


それに当時の人参は供給量が特に少ない薬物ときている。


だがこの高値には、もう一つ理由があるようである。


寛文・延宝(1661〜1680)の頃、数原通玄という良医、朝鮮人参の効能を考へ──衆人の命を助くる事限り知らず。──これより大効ある事をいよいよ知る」と、 『近代世事談』にあるとおり、この時代人参の薬効に人気が集まったらしい。


昔から人参湯の薬効そのものは起死回生の薬として知られていた。


この薬湯は漢方の医学書『金匱要略』に登場するし、『傷寒論』には理中丸として出てくる。 

いまでいう特別な新薬というわけではなかった。


しかしながら、通常処方される人参湯には三両(十二匁)、つまり45グラム(現代では十五日分)の人参が必要となるが、とても一般庶民が買える薬ではない。


円に換算するとこれだけで60万以上もする高貴薬である。


天文(1532〜1554)の頃の名医永田徳本は薬一服18八文以上取らなかった。


患者が二代将軍秀忠のときも治療代は18文だけしか取らなかったというが、これは例外中の例外であろう。

医療や医薬が安価であるはずはないのだ。


江戸時代医家,売薬で巨富を成すものが多かったのは、各種の史料をみれば分かることであるが、ここには高貴薬の人参が絡んでいる。


安政度で診察料が銀十五匁から三十匁(約一万五千円)、往診料は初度に二十二匁五分、その後は一度毎に十五匁ということで、こうした医療費とは別に一里内外は三十匁、二里は六十匁、二里半は二両、三里以上は五両(約十五万円)、おまけに二里以上は駕籠の往来であれば、 さらに往診療として駕籠賃、弁当代は病家が出すというものであった。


薬代はというと、七日分が銀三十匁、三日分が十五匁であるが、宵越しの金など持たない庶民はそう簡単に医者に掛かれなかったのである。


そうなると自然とお手軽な鍼灸療法ということになる。灸は京阪とも二十四文(約144円相当) ですえられた。


按摩代は子供の按摩の揉み代、上下揉んで二十四文。大人の按摩は上下揉みは四十八文であったのだ。

現代でいえば、お手軽クイック整体というところである。


もちろんこれが相場であるから、世間にはこれより高い料金を取った者もいたであろうし、より安めに割り引いた場合もあったろう。

これを酒の価格と比較すると実感としてよく分かる。

安政の時代では、上酒一升が三百四十文から四百文(約2400円)のあいだであったという。『守貞漫稿』

ただし当時には、今のように酒に割高な税金は掛けられてはいなかった。



酒で病を紛らわすこともあった。




















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2017年11月26日

世界にいまも通用する浮世絵文化

動く浮世絵を鑑賞する!

浮世絵といえば、普段目にするのは静止画である。

江戸時代の風俗を中心に美人画や役者絵、さらには名所風景といった観光案内図が描かれている。

東洲斎写楽の「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」や葛飾北斎の「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」などの有名な作品は、日本だけではなく海外でもよく知られている。

こうした浮世絵を題材にしたGIFアニメーションが動画としてさかんに紹介されている。

日本のアニメ文化とも相まって国内だけではなくて、海外でも話題となっているようだ。

動画になった浮世絵も何だか斬新で面白い。





【動く浮世絵】特等席 by 瀬川三十七









うごく浮世絵 北斎えほん









[動く浮世絵】Hokusai ukiyoe 北斎 浮世絵 富士山









【動く浮世絵】顔芸 by 瀬川三十七










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2017年11月20日

本当に饅頭が嫌いな人たちがいます!?

そこにある食物が怖い!?

子どもの食物アレルギー、治療や検査で8人が重症

横浜市の医療機関で食物アレルギー治療の臨床研究に参加した子どもが一時心肺停止になった問題に関連し、全国でほかの子ども8人も治療や検査で重い症状が出ていたことが19日、わかった。2017年11月19日 朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASKCM6FX9KCMUBQU011.html


人にはそれぞれ食物に好き嫌いといった嗜好がある。

どうしても酒が飲めない、なになにが食べられないという人はわりと多いものである。

若いとき友人の屈強な武道家に無理にビールを飲ませたら、一口飲んだら顔が真っ赤になってそのままぶっ倒れてしまい驚いたことがある。

友人は外見とは違って、アルコールをまったく受け付けなかったのである。

そのように苦手な食品があるとか、ただ嫌いというだけなら話はわかるが、それらに近づくのも恐ろしいとなると話は変わってくる。

もちろんあの「饅頭怖い」の類の話ではないのであるが、世の中には本当にアンコが嫌い、一口も食べられないという人もいるわけだからここらは奥が深いところである。

これに関していくつか江戸時代の奇談を集めてみた。


 
man.jpg 




享保年間のことである。

御先手を勤めていた鈴木伊兵衛という人はどうしたことか百合の花が無性に嫌いであった。

あるとき茶会で仲間が四五人集まった席で、吸い物が出て皆が箸をとったのに伊兵衛だけが不快そうな顔をして落ち着かない様子であった。

いかにも機嫌が悪そうにみえ箸も取らない。

皆が一体どうしたのかと聞くと、「もしかしてこの吸い物に百合の根でもはいっているのではないか」という。

「いや貴殿が百合が嫌いなことは以前から知っていることだから、そのような無礼なことはしない」と、主人が言う。

そうこうしているうちに同席している一座のなかの膳に、なんと百合の絵が描かれているのがあったのである。

これには皆驚いてしまった。

すぐにこの膳を下げて取り替えてもらったところ、伊兵衛は元のように元気になったというのである。


次は鍼師山本東作の伝える話である。

土屋能登守(土浦城主・九万五千石)の家来に樋口小学という医師がいたが、この人は非常に鼠が嫌いであった。

あるとき同僚達で一緒に食事をすることになり、彼もこの席に招かれた。

ところがこのとき彼だけが少し遅れて来ることになったのであるが、皆で「以前から 鼠嫌いとは聞いているが、いかにも妙である。本当かどうか一つためしてみようではないか」、ということになった。

そこで鼠の死骸を持ってきて小学が座る席の畳の下に隠しておいて、そ知らぬ顔して待っいることにしたのである。

しばらくして小学がやってきたのでその席に座らせ、膳も出させた。

すると小学は急に顔色が悪くなり、全身から汗を流していかにも苦しそうな素振りである。

「どうしたのだ」、と皆が声をかけるがそれに答えることもできないほど弱りきった様子である。

いまさら鼠を隠していることなど言えば果たし合いになるやもしれず、皆はそのことには口に出せないまま交互に介抱するより他になかった。

小学が帰宅したいというので人を付けて送っていったが、後から聞いてみると、宿に帰って後はすっかり回復して何のこともなかったということであった──。(以上『耳袋』より)


二つの事例によれば、嫌いな物は恐ろしいほど徹底して嫌いなのである。

ではこのような状況を強いられた者が、極限までいくとどうなってしまうのか。

これについても江戸時代の記録が残されているので紹介しょう。

元禄時代の尾張藩の御畳奉行が書き残した日記に次のようなものがあった。

元禄七年の出来である。

ある男がどうしたことか、焼き味噌を極端に恐れるということで城下で噂になっていた。

それを聞いた藩主源敬公(初代義直)は、この男を直に試してみようと酒宴に呼び寄せ焼き味噌を肴に杯をたまわった。

公は例の男に声をかけられ、その焼き味噌を手ずから下されたのである。

男は焼き味噌を恐れながらも公の御前で逃げることもできないまま、仕方無く手を差し出し頂戴した。

だがその途端、いきなりその手が強直してしまい引くことも曲げることも出来なくなってしまったのである。

この事態に驚いた公は直ちに男を次の間に引き下がらせ、掌の焼き味噌を捨てさせるという騒ぎとなった。

ところがその後、この男の掌には赤黒く味噌の痕が醜く残り、次第にその部分から腐りはじめてやがて死んだというのである。──

このように過去の記録としては残ってはいるが、厳密な意味での因果関係は分からないところではあろう。

こうした事例をみてどう考えるかである。

普通であれば何のこともない無いものが、特定の人にとっては体に害をなすという事態である。

ある種のアレルギー症とみるか、ショック状態があるところをみればアナフィラキシー・ショックというべきか。

いや、何らかの恐怖心からくるのであるのなら心因性、精神性の過剰反応というふうに片づけてしまうというのが西洋医学に近い考えというところであろうか。

むしろすっぱりと、このような現象は「電磁波過敏症」同様に西洋医学の範疇に入らぬと言い切るのが正論であろう。

イレギュラーな情報は削除しても支障はあるまい。

では東洋医学的にみて、こうした現象が説明できるのであろうか。

実は中国医学にはこのような現象を逆に応用した伝統的な治療手法がある。

古代から実践されていた握薬(敷掌心法)というのがそれである。

薬味を手掌にのせるだけ、あるいは握らせるだけで薬(の気)が身体に作用し、治療としての効力を発揮するというものである。

このような治療に関しては、古くは中国の葛洪(二八三〜三六三)や呉尚先(一八〇六〜一 八八六)の医学書にも記述があることが知られている。

具体的に例を上げてみよう。

16世紀末に李時珍の著した『本草綱目』の石燕(化石の一種)に関する記述によると、これは通常には痔や下痢に効能があるとされるのだが、最も注目すべき用法は雌雄があるとされる石燕各一片づつを、陣痛に苦しむ妊婦の両手に握らせた時に顕れるという。

なんと、それだけで妊婦が苦痛から解放されるというのであるから面白い。

すでては「気」のレベルの話である。

これが本当に事実かどうかは試していないので何ともいえないが、ここから拡大解釈したにしても、実際に石燕に薬気なるものがあるか、いや膳に描かれた百合の絵に気があるか、さらに鼠の死骸や焼き味噌に気があるのかといわれれば、これ以上は私としても答えようがないわけである。

何かの気が出ているとするならば、それがある人にとっては薬気となり一方では邪気となるわけだし、あるいは気ではなくて何かの波動・信号波・微粒子が身体に対して作用しているとこじつけたにしても、もちろんこれではすぐさま科学的な答えとはなりえない。

しかしとにもかくにも、この動植物や薬気に感応し反応する現象、要するに抗原抗体反応を想起させるような人体の未知の部分には少なからず興味が湧くわけである。


余談であるが、かって「文化ゴリラ」とまでいわれ自ら肉体を鍛え上げた作家の三島由紀夫は意外にも海産物の蟹を極度に恐れたということである。

「蟹」の姿そのものはもちろんのこと、蟹という字形さえも見るのを嫌って逃げたという。

当方は小豆でつくった「あんこ」が、大好きである。

ところが親族に「あんこ」の類いがまったく食べられないという者がいる。

この極端な取り合わせが可笑しくてたまらない。













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posted by モモちゃん at 08:37| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月30日

筑後柳川の掘り割り風景を見る・廃市

水郷柳河と掘り割りの風景

柳川は水郷ともいわれるように、街中を縦横に掘割が走っている。

柳川は戦国時代の蒲池氏の城下 (柳河城)として、安土桃山時代は田中吉政が入府し、さらに江戸時代には立花宗茂の柳河藩13万石の城下町として発展してきた歴史がある。

こうした掘割は歴代の領主による治水工事でここまで整備されたもので、江戸時代当時とほぼ変わらない水路をいまも随所に残している。

だから城下周辺の水路沿いの人家や寺社は、かっての古地図と変わらぬ位置にあることになる。

それが独特の風情ということになる。



RIMG1259



























もともとこの土地が有明海にも近く低湿地帯であったことで、その排水路を掘割の整備によって改善したのである。

水路の間に町があり、町の間にいくつもの水路が流れている。



RIMG1252



























だから掘割には各所に水門が設けられていて、その水位を調節できるようになっている。



RIMG1248




















多くの掘割は、かっては運河として貨物の輸送にも活用されたし、その水は住民の生活用水としても使われていた。



RIMG1262
























掘り割りも整備されて、見た目にもひなびた観光地にみえる。

柳川といえば、現在ではもっぱら観光川下りとして有名である。








RIMG1261



























江戸時代も掘割の両側にはたくさんの商家か並んでいた。

掘割に隣接しているから、重い荷駄も船を使って運び込めたのでその積み下ろしには至極便利であった。







RIMG1267



























こうした街の佇まいのなかに、詩人北原白秋の生家が残されている。





RIMG1266




























北原白秋生家とその記念館が並んでいる。










RIMG1264


























むかしの面影を残した造り酒屋の様子が伺える。






RIMG1265



























夕方の白秋生家記念館の庭には、大きな晩白柚が実っていた。







RIMG1268



























掘り割りに面して、各家々には水くみ場が設けられている。

かっての武家屋敷には、こうした掘割からの石段の上り口が設けられていた。

そこから小舟に乗ることも出来たし、婚礼の時は道路を使わずにこうした船着き場からそのまま花嫁の輿入れが行われていた。


柳川ではいまでもそうした伝統が残されている。








RIMG1270


























柳河は福永武彦の小説『廃市』(はいし)の舞台となったことで知られるが、その小説を原作にした大林宣彦監督の映画も1984年に公開された。

壮絶な男女の情念が絡んだ恋愛と葛藤とを描いた原作小説も読んでいたし映画も見た記憶がある。

その映画作品はかっての風情ある柳河の自然が美しく映し出されていただけでなく、小説の世界が見事に再現されていたように思う。





「廃市」 The Deserted City (1984) Trailer 予告編  











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2017年10月02日

川柳で笑って学び直す江戸文化!

いつの世も腎張が幅を効かす!


「精力」という言葉があるが、これは如何にも東洋医学的意味相が強い。

さらに武道の世界では「精力善用」という、己の行動哲学ともいうべき明確な教えがある。

精力を発散するにも心して善用しなければ、欲望のままではそれこそあらぬ方向に突っ走ってしまうことになる。

その結果、身を損じ、大恥をかき、世間を騒がせ顔向けできぬ事態をも招きかねないわけだ。

ならば、いったいその精力の実体とは何なのか?

「精力善用」とて、根底には東洋的な思想としての節度ある君子の道が示されているわけであるが、それはむしろ表面的な事象に過ぎないのだ。

というのは健康面でみたときの相対的な体力というか、それこそ全体的観点から評価される精神的肉体的活力を指しているからである。

さらにそのなかには当然のことであるが、性的能力に繋がる意味も含まれていることを忘れてはならない。

同様の話をするのに共通の言語認識がないと、当然のことであるが相手に話がまったく通じないことがある。

職業であれば共通の業界用語というのがあるが、これなどは部外者にはさっぱり分からないものである。

ここではそうした言葉の古典的意味合いをまず始めに紹介しておきたいと思う。


「命知らずとよし言はば言へ 君故に腎虚せんこと望みなれ」(新撰筑波集・恋の都) −−

西洋の医学が入ってくるまでは大陸から伝播した中国医学がもっぱら行われていた。

いろいろな病気や症状もすべてがそうした東洋医学的な説明がされていたことになる。

体に具わっている免疫力や基礎的エネルギーは[気]の働きによるものだとされていた。

しかもこうした生命エネルギーそのものは目には捉えられないが、その根源は五臓六腑の腎にあると考えられていたわけで、腎はそれだけ重要な働きをする臓器であるとの認識があったことになる。

そもそも人体の生命エネルギーは、両親から生前先天的にもたらされる先天の元気と、呼吸や食物の摂取によって得られる後天の元気があるのだという。

これらが合わさって誕生後の生命活動が維持されているのだという自然哲学的な考え方である。

当然この生命エネルギー自体には大きな個体差、個人差がある。

体力的に強靱な者もおれば、腺病質で虚弱な者もいるといった具相で、体質、体格にも格差が出てくることになる。

そこから体力がある者を腎張といい、体力がなく消耗した状態の者を腎虚といった。

腎張は精力絶倫ということで通常は男性を指していったのだが、もちろん女性の場合も同様に扱われた。

もとは医学専門用語であったのだが、一般に使われ出したのは江戸時代も後半になってからである。

漢方医学で腎虚証といえば、痩せた老人によくみられるということであるが、最近は冷え性の自覚症状がある若い女性や低体温の子供などもこれに該当するようである。

若年層にそういう傾向が出てきたということは、現代生活や食生活に原因の一端はある かも知れない。

中国の中医学でも腎陰、腎陽それぞれに虚証の認識があるし、それぞれに対応した薬剤の処方もある。

そもそもこの腎虚なる言葉がわが国で使われだしたのは、いつのことであったのか考えてみた。

少なくとも「医心方」が編纂された頃には、当時の貴族社会にはその認識は充分に浸透 していたであろう。

そういえば若い頃、南原幹雄の時代小説「天平の写経師」というのを読んだことがあったが、その中に 特に印象深い部分があった。

写経といっても、大抵は中国伝来の文献類が写経師によって筆写されていた。

あるとき一人の写経師が渡来文献を書き写している際に、偶然房内に関連した貴重な文献に遭遇する。

それには腎虚、腎陽を補う処方が記載されていた。

写経師らはこの貴重な医術情報に大喜びするのであるが、その処方の内容をみて悲鳴に近い 落胆の声を上げる。

何故ならば、ほとんどの薬剤が彼らには到底入手する術もない高価な物ばかりであったからである。

それらの薬剤が値のはるものであれば、たとえそれらを使った処方を知ったところで彼らにはどうすることもできないではないか。

結局これらの処方は朝廷内の高位の貴族階級が独り占めしてしまう医療情報でしかなかった。

安い労賃でその日暮らしに違いない彼らのこの落胆ぶりに、貧乏学生であった当時の私は一種の共感を覚えた記憶がある。

同じ頃読んだ池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」にも、女盗賊に囲われた若い男の腎虚が巧みに描写されていた。

それこそ江戸時代になると腎虚そのものは掃いて捨てるほど巷に転がっていたようである。

その薬腎虚させ手が煎じてる

当時の川柳をみると一般庶民に広く知られた腎虚の薬というものがあったようである。 

それはどんな薬かといえば、同じ川柳に「地黄丸女(房)がほめる薬なり」とあるから、 これはどうやら腎陰虚や腎陽虚に使われる六味地黄丸とか八味地黄丸あたりの強精剤を指 しているということが判明する。

川柳が教えるあたりは粋なものである。

しかも関連するのは一つや二つではない。

「地黄はやりて天下泰平」

「雌鶏すすめて玉子湯で地黄丸」

「六味丸焼石に水の打つような」

「六味丸買いに女房の細い腰」

とにかく笑ってしまう。


さらに「ああ少ないかな腎と地黄丸」という面白いものもある。 この川柳は論語の「巧言令色鮮ないかな仁」を教養高くもじったものである。

さらに「吾十有五にして学に志す。三十にして立つ」にかけて、「三十で地黄のあうは知れた事」、 「地黄と聞いて笑う三十」というのもある。

また「六味丸拵えている納所坊」とあるから、お寺の和尚さんにもそこそこ需要があったということらしい。

江戸時代、「腎虚」の反対の状態を「腎張り」と言った。それこそもてもての状況であろうか。

腎張りはおっとせい程つれ歩き











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posted by モモちゃん at 09:43| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月27日

世界で通用する日本の癒やし整体手技

従来の柔道整復師や腕のある理学療法士さえもが整体師として独立開業するケースが多くなりました
整体院・アロマ・癒しサロン開業マニュアル

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何故健康サロン、癒し整体はインターネットと相性がいいのか?

むしろ整体・癒しサロンは地方の田舎でこそ開業のチャンスがあります!

整体院開業に、学歴や年齢、性別、国籍に関係なく就業可能です。
どなたでも自由に癒し整体業(医業類似行為)・リラクセーションの職業につけます。

どなたでも就業に対する熱意とその
スキル(skill)
さえあれば確かなビジネスチャンスがあります。

@整体業には公的免許は必要ではありません。当然、薬物の取り扱い、病気の診断、手術、治療など医師法に触れる行為は禁止されています。

A健康を害する行為を行わなければ憲法で保障された職業選択の自由として、癒し整体の療術を業とすることが出来ます。

B整体は伝統的な民間療法の一つです。法律の範囲内での健康法を業として施すことは違法ではありません。

C癒しやリラクセーションなど、広告や看板設置も業務の内容について法律の範囲内で自由にできます。


こうした療術業については、「いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決について」(昭和35年3月30日)に基づき、昭和36年6月に行われた「衆議院社会労働委員会の徒手技術(療術)行為の審議に対する厚生省 (現・厚生労働省)の意見要旨」でも示されています。

業務に必要な施術面でのスキルを磨くことはもとより、親切丁寧な接客に必要な社会性のあるコミュニケーションセンスを身につけることが出来れば誰でも整体師になれます。これこそが最大のポイントです。
資格や設備についての法的規制がないこともあって、多くの場合初期投資も小額で開業可能です。

場合によっては施術スペースだけ用意すればいいわけで、高額な機械器具などは特別必要ありません。

ご存知ですか、この業界は国籍さえもまったく関係ないのです。
手っ取り早く仕事が出来る分野ということで外国人でさえ進出できる新しい業態なのです。

しかもネット環境さえあれば専門的情報も簡単に入手できるのです。
不況にも強く定年もありませんので、女性であっても一生涯に渡って独立して自由に癒しやリラクゼーション分野の仕事が続けられます。

初期投資が押さえられることから、今後も多くのヘルス関連企業や大手の美容サロンが進出してきます。

何故なら癒しやリラクゼーションの分野の潜在的需要は、世界中で増え続けているからなのです。






ただし癒し整体・療術の範囲を厳守すること

個人でも多少の適性は考慮すべきです。
日ごろから癒しや健康情報に関心がある方、接客が得意な方、話題が豊富で人との会話が苦痛ではない方、武道やスポーツ、介護などの経験がある方、インターネットを使って市場調査や情報の発信が出来る方、マーケティングやセールスの接客センスがある方などはより適性があって有利です。

これが、まず癒し整体業に従事する上での重要なスキルになり得ます。

ただ看板だけを挙げてじっと待っていれば顧客が自然に集まるというものではありません。

整体や癒し健康サロンなどの広告に関して、現在インターネット分野は規制がほとんどされていません。

法律で規定された業種は必ずその業務範囲と広告の規制とが課せられますが、規制のない業態にはそうした部分の拘束がないわけです。

そこでは業態としての自由な広告表現ができるわけで、営業活動はやり易いことがまず第一に挙げられるわけです。

しかし当然のことですが、癒し整体や療術の範囲から逸脱すると規制の対象となります。

当然のことですが、病気治療などの医師法や薬事法などの法律に抵触する広告は規制されます。

もとより逸脱した違反広告は厳しく罰せられるべきものなのです。

広告や集客手法に関していえることは、現代のインターネットそのものは不可欠の宣伝媒体となるということです。

始めは口コミでスタート出来ても、継続的に集客していくにはインターネットを使ったセールスメニューが当然必要です。

まわりにある整体院やアロマサロンを見てみてください。
そこにいかに巧みなイメージ戦略がネット上で展開されているかを観察してみてください。

整体そのものは、ファッションや美容の業界にも似た美意識に訴えるイメージ戦略がもっとも発揮できる業態ですので、女性にはより有望な職種となりうるのです。

最低限、インターネットを利用した広告媒体だけは用意する必要があります。

開業資金の都合で立地条件がよくない自宅開業を選択した場合などは、特にそうしたネット広告の初期投資が盛業を目指すための重要な必須ポイントとなります。

まず業務範囲のリスク対策をしておくことが重要です!

職業である以上、就業中のリスクはあります。

社会的規範、関連法規等は当然のこと、社会生活として人との接触が頻繁であればいろいろなトラブルも生じるわけですからそれらは常識の範囲として個別に対処すべきことです。

ここでいう就業リスクとは、癒し整体業や療術業でのリスクやトラブルそのものは必須の事項として事前にリスク管理として考慮しておくべきだということです。

まず手始めとして、自賠責の保険に加入があげられます。

癒し整体業や療術業を対象とした専門の「賠償保険」がありますので、可能な限りこれを利用しておくべきです。



開業に関係する法律は絶対に見落とせない!
整体業や健康癒しサロン開業は自由であっても、やはりそこには直接関係してくる法律があります。
何が出来て何が規制されているのかの判断基準はこれらの関連法規に従うべきなのです。
こうした知識無しの安易な受け売りだけで業務は継続できないことを理解しておかなくてはなりません。

整体師ー整体院開業整体師、整体院に関連する法規の解説







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posted by モモちゃん at 06:57| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月25日

忘れられた歴史的語彙・武士の意地とは何か?

森鴎外武士の意地が描かれている作品


森鴎外の短編小説に『阿部一族』という作品がある。

江戸時代初期に肥後藩で起きた殉死に関わる事件を題材にしもので、家中の重職であった阿部一族が上意討ちに至る経緯が歴史小説として、大正2年(1913年)1月に『中央公論』誌上に発表された。

その事件の発端は、寛永18年(1641年)肥後藩主細川忠利の病状が悪化し、側近たちは次々と殉死を願い出て許されたのであるが、老臣の阿部弥一右衛門も同様に殉死の許可を乞うが、主君忠利は「生きて新藩主を助けよ」と遺言し、忠利は死去する。

主君の許可なく腹を切ったのでは犬死だと、弥一右衛門は考えていた。

旧臣たちが次々と殉死していく中で弥一右衛門は、殉死できぬまま従来どおり勤務していたが、周囲からは彼が命を惜しんでいるという陰口を耳にしたことで、息子ら一族を集め彼らの面前で切腹を遂げる。

しかし主君の遺命に背いたことが問題となり、阿部家は藩から殉死者の遺族として扱われず、逆に家格を落とす処分を受けることとなる。

鬱憤をつのらせた弥一右衛門の嫡子・権兵衛は、忠利の一周忌法要の場で髻を切ったことで非礼を咎められ、捕縛され罪人同様に縛り首となる。

藩から一族への度重なる恥辱によって彼ら一族は家中での武士としての面目を失い、追い詰められたことで、次男の弥五兵衛はじめ兄弟は覚悟を決して屋敷に立てこもる。

そしてついには藩のさし向けた討手を相手に壮絶な死闘を展開し、阿部一族は全滅する。

阿部一族の武士としての意地が鮮烈に描かれている作品である。


ここで初めて熊谷久虎監督の戦前の映画作品「阿部一族(1938)」を観た。

この作品は、森鴎外の作品を忠実に描き切っているように思えた。






阿部一族(1938)/熊谷久虎













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posted by モモちゃん at 08:53| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月18日

江戸幕府の最高機密が海外に漏れていた!?

お江戸の秘密諜報員とは?


江戸時代の眼科の泰斗として知られた土生玄碩は安芸国吉田の眼科医の家に生まれ、鍼を使った白内障治療の新しい術式を考案した人物である。

大阪で蘭方を学びさらに江戸に出てからは眼科の名医として知られ、ついには将軍の侍医として法眼の位に叙せられていた。

ところが文政十二年(1829)丑年十二月十三日、この土生玄碩と子息の玄昌父子両人がシーボルト事件に連座し、改易となる事件が起こった。
その経緯を記した当時の記録には次のようにある。


「先達、オランダ人江戸逗留中、伜玄昌義、対話として罷り越し候処、外科シイボルト 義、眼科療治法の秘薬所持致す旨承り、其方へ申聞け、右は眼科第一の妙薬と相聞こえ、 且つは疑わしくも存じ、其方義旅宿へ罷り越し、シイボルトへ対話、効能をも試し候処、 実に希代の薬験之有り感伏致し、万人の助けに成らる可き義に付き、伝授受取り度く、夜 中忍びにて度々罷り越し、オランダ人と懇意を結び候へども、容易には伝授致すまじく、 カピタンへ相願い然る可き哉と然りてカピタンの歓び候品遣し度く言い含め、その教えに 任せ、何の思慮も無旨○御召御紋の羽織を差し遣わし、薬法伝授の義取り計らひ呉れ候様 相願ひ候処、シイボルト義も右体の品望みの趣申し聞け候に付、其後時服御紋附御帷子差 し遣わし候処、薬法伝授致し呉れ候間、謝礼として猶又御紋服遣わし候段、たとえ私欲に かかわる義には之無く、弁へざる義に候とも、御国禁を背き候段、不届きの至りに候、之 に依り改易仰せ付けられる者也。」(『藤岡屋日記』)


habu.jpg




この事件が起こる丁度十年前、文政六年(1823年)7月3日、シーボルトは長崎出島 のオランダ商館付医師としてバタビアを経由して初めて日本に来航し、ここを拠点にして医師として精力的に活動を開始していた。

やがて彼は長崎の地に鳴滝塾を設立し向学心に燃える優秀な塾生を集め西洋医学を教授したので あるが、これは当時としては実に画期的な事業であった。

それまでの閉鎖的な医学教育とは比較にならないオープンな外科手術法の伝授に、多くの塾生達は目を見張った。



boruto.gif




その中には、高野長英、二宮敬作、伊東玄朴、小関三英、伊藤圭介らがおり、最新の西洋医学を講義された。

シーボルトは多くの塾生を教えながら、一方で広範な「日本学」の研究を精力的に進めていた。

塾生達がオランダ語を習得し始めると、シーボルトは次々とオランダ語による研究リポ ートを提出させると共に、これによってあらゆる分野の日本文化の資料や標本を収集することが可能となった。

鳴滝塾の事を聞きつけて全国各地から蘭学を学ぼうとする俊英が数多く集まってきたから、 こうした人材には事欠かなかった。

シーボルトは西洋の薬物情報を記載したテキストを作成すると、それを塾生の一人である高良斉に日本語に翻訳させると、文政年八年(1825)には『薬品応手録』として大阪で出版した。

シーボルトは日本国内の医学の現状に強い関心があり、特に鍼灸術をはじめ本草学に精通した医師達と積極的に交流したが、こうした西洋の薬物情報関連の出版物は当時の蘭方医達に少なからず影響を与えた。

しかもこの『薬品応手録』という医学書は、実に意外な情報を秘めていたのであった。

こ こでいう意外な情報とは冒頭で紹介した当時の眼科医、土生玄碩にとって、という意味おいてである。

この医書の内容からいけば医学書というより薬物書というべきであるが、当時の入手し 易い外国産薬物の効能や用法の解説はもちろんのこと、特に実用度を高める意味で日本産 の薬物を主体にして編集されていることが大きな特徴であった。


このなかにはジキタリスやベラドンナといった薬草についての解説があった。

当初『薬品応手録』は鳴滝塾でテキストとして使われ、シーボルトの江戸参付のとき各 地で交流した医師たちにも贈られた。

もちろんこの画期的内容の医書自体は、眼科医・土生玄碩の手にも渡っていたはずなのであるが、この当たりの行き違いやねじれた経緯がもとで、シーボルト事件がスキャンダラスナなものに変貌 していった。


長崎からの江戸参府は五年ごとに行われ、文政年九年商館長スチュレルに随員としてシーボルトもこのときのオランダ使節団に参加した。

シーボルトは各地の宿泊所で多くの蘭学者や本草学者らと学術交流を行ったのであるが、 江戸ではこの土生玄碩当人とも会見している。

玄碩はこのときシーボルトの眼科手術の講義を聞き自分の術式を彼に詳しく説明したところ 高い評価を得たのである。

事実、シーボルトは玄碩の画期的術式には驚いているのである。

さらに後日、シーボルトは薬剤によって瞳孔を開かせる実験を玄碩に見せたのであるが、今度は逆に玄碩の方が驚嘆してしまった。

この開瞳用の薬剤さえ手元にあれば、玄碩の行う眼科手術は格段にやり易くなるはずであった。
ところが玄碩が再三にわたってシーボルトに問いただしたのだが、どうしたことかすぐには薬剤の処方を教えてもらえなかった。


玄碩は非常なあせりを覚えたらしい。

度々シー ボルトの元を訪れてウナギの蒲焼、駅路の鈴、さらには春画といったものまで贈るという具合に、あらゆる手立てを尽くして必死になって聞き出そうとするがまったく埒があかない。

実はこの薬剤についてはすでに前述の『薬品応手録』に記載されていたのである。

それがベラドンナ(莨とう・中南欧産の多年草であり日本名はハシリドコロともいう)であり、開瞳薬の主成分となるものであった。

ここで何故にシーボルトがすんなりと処方を教えなかったのか理由はいろいろと考えられようが、微妙な部分だけに第三者には理由は分からない。

シーボルト自身は学生時代に幾度となく決闘をした経験もある無骨な一面を持った人物であり、性格的には高慢で自意識が強い上に、無遠慮なところや目的を追行するにも相手構わず強引なところがあったという。

一方の玄碩も若いときは放蕩三昧な遊び人であって、争いも多く医者仲間から「ホラ貝玄碩」と嘲られたこともあるような強い個性を持った人物である。

このような交換条件を伴ったある種の取引ともなれば、当然両者ともそれなりに構える部分はあったろうと思う。

意地と意地とのぶつかり合いといった、相当な駆け引きと険悪なやり取りもそこではあったのではないか。

お節介なことではあるが、ここで交渉がうまくいかなかった理由を思いつくままにいくつか上げてみよう。


1.開瞳薬は眼科治療には不可欠の貴重な薬剤であったから、シーボルトは始めから教授 に対して何らかの見返り(交換条件)を要求するつもりであった。

事実有用な医学情報と引き換えに、それまでにもシーボルトは珍しい物品を医師たちから度々受け取っていた。

2.ベラドンナはすでに『薬品応手録』に記載されている薬物である。それに全く気付かぬ玄碩の不勉 強さと情報に対する安易な態度が、シーボルトを不快にさせたのかも知れない。

3.日本一の眼科の名医、流行医者、将軍の侍医、法眼の位ということで、シーボルトに対しても高慢な 態度を取った。この背景には玄碩のシーボルトへ対するライバル意識がどこかにあったのではないか。

4.玄碩は目薬の売薬で莫大な利益を上げて巨富を蓄え、さらにこれを高利貸している人物であったから、医者とはいえシーボルトには金銭に執着した胡散臭い人物に見えたかも知れない。

5.気性が激しいだけに、両者とも単に気が合わなかった。


どれが該当するか私には断定できないが、結果的には玄碩は大きな代償を払わされることになる。

とうとう玄碩は薬剤名を聞き出すのに、将軍より拝領の三つ葉葵の紋服を国禁を犯してシ ーボルトに贈ってしまうのである。



ha.jpg



文政十一年(1828年)9月17日、バタビア仕立てのオランダ船、コネリウス・ハウト マン号は長崎で猛烈な暴風雨に遭遇し稲佐海岸に乗り上難破した。

シーボルトは任期満ちてこの船で帰国する予定であり、日本における大量の学術資料を 船に積み込んでいたが、役人による被害調査を兼ねた積荷検査でご禁制の日本地図が船内から偶然発見されたのである。

このとき出てきた地図類はあの伊能忠敬が測量作図した高精度の『日本輿地全図』の写しであった。

日本全土がほぼ正確に計測され作図された地図として江戸城紅葉山文庫(歴代将軍の霊廟と機密文書・図書の収納庫)に秘蔵されていたものであり、結果的には当時の日本の最高機密情報がシーボルトによってまさに国外に持ち出されようとしていたことになる。

それらの地図の中には間宮林蔵による北方の樺太の地形情報も含まれており、当時これらは日本が唯一正確な測量を行っていたものであった。


もとより幕府が管理している秘蔵の地図であるからには、当然外部持ち出しは制限されていたと思われるのであるが、実際にはそれほど厳重ではなかったように思える。

そもそも紅葉山文庫を所管する書物奉行の高橋作左衛門景保が、江戸参府の際江戸城を訪れたシーボルトを密かに文庫内に案内してこれらの地図を見せたことが、地図の持ち出し漏洩のきっかけであった。

シーボルトは地図の内容とその精度に驚くと共に、高橋景保に対して巧みに交換条件を持ち出してこれらの測量図の写しを譲り受けたのであった。

この辺りの経緯として、「私は城番の家来を買収して将軍の御殿のよい見取り図を手に入れることに成功した」とシーボルトは自慢げに書き残している。

後日伊能図を持ち帰ったシーボルトは、オランダでメルカトル図法に修正した「日本人の原図および天文観測に基づいての日本国図」として、したたかにもこれを刊行している。


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さらにこの事件で幕府役人を驚かせたことは、シーボルト宅の捜索で土生玄碩が贈ったとされる持ち出しご禁制の葵紋の羽織が出てきたことであった。

(徳川家の家紋である葵の紋は歴代の将軍によって紋様が微妙に違っている。

当時の第十一代将軍家斉(いえなり:在位1787-1837)の紋章は、下の通り13葉のものである。)

aoi.gif


発覚に至るまでに何らかの事前探索や密告があったのかもしれないが、 これがシーボルト事件の発端であり、これによって土生玄碩・玄昌父子が改易となり座敷牢に拘禁されたわけである。


シーボルトは学術研究においては、その標本の入手、資料の収集については非常な好奇心としたたかさを持っていた。

各種の標本や禁制品の日本地図や最高機密の江戸城内の詳細な図面などを入手している事実を見ると、土生玄碩同様、目的貫徹に至るまでは並みのしたたかさではないことは明白である。

彼の一連の違法探索と情報収集活動そのものは外国人によるスパイ行為とみられても仕方のないものであったろう。

シーボルト事件によって鳴滝塾の優秀な塾生(23人)の多くが次々と連座して罰せられ獄死していった。

ご禁制の地図類を手渡した幕府天文方の役人高橋景保も捕らえられ同様の結末であった。

外交方の筆頭でもあった高橋は獄死(1829年3月20日急死)したが死体はそのまま塩漬けにされ、刑確定時に斬首という厳しいものであった。

ただ、シーボルトは結果的には国外に追放されたのであるが、この事件ですべてを失ったわけではなかった。

ここでもシーボルトはしたたかさを発揮して、追放時には没収されたはずの図面の写しをしっかりと隠し持って帰国した。(1829年12月30日長崎出港)


一方の土生玄碩がしたたかというのは、誇大な市中広告によって目薬販売を行い巨富を得た 事実からも容易に察せられるが、それよりもシーボルト事件で彼の領地や膨大な貸金がお上に没 収され、しかも入牢という事態に陥っても少しもへこたれはしなかったからである。

普通入牢すれば、その過酷な状況からいけば数カ月もしないうちに健康を損ない病死ということも考えられるのであるが、そこはしたたかな玄碩である。

このとき玄碩は、どこからともなく大金を融通してくる。

玄碩は事件発覚以前に、手回しよく金銀を二つの油樽にいれて深川に沈めておいたのだった。

この用意周到さと緊急時の肝の座った対応には、あきれるばかりである。

こうした潤沢な資金を使って、ころあいを見て各方面に巧妙な赦免工作を手配した。

もとより彼の名医としての実績は幕府も無視できず、やがて許されて無事出獄することが出来たのである。


その後、玄碩は現役復帰して87歳の長寿を得ただけでなく、日本の近代眼科学発展に貢献した医師として高く評価されるに至った。

意外な展開であるが、その功績により彼の頭蓋骨は現在東京大学医学部において学会の宝物として保存されているということである。

このように観ていくとシーボルトと土生玄碩とは医者というだけでなく、互いにどこかしら似ているのである。

もちろん、その目的貫徹にみせる並外れた強固な意志としたたかさという点で、見事なまでに。






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2017年09月13日

江戸時代の酩酊殺人事件記録の核心に迫る?!

酔っぱらいの狼藉は大目に見よってか?

酩酊による判断能力減退を理由に殺人罪が軽減、沖縄地裁


11月22日、沖縄県那覇地裁は、家宅侵入および殺人罪の裁判で被告に対し、犯行時に「飲酒による酩酊で心神耗弱状態」であったことを理由に25年の求刑を14年に減刑した。

被告の設備工石下慶祐被告は昨年2月日に勤務先の飲み会の後、タクシーで自宅近くまで到着し、面識のない女性の住宅に侵入した挙句、室内にあったナイフで寝ていた女性を数回突き刺して殺害した。

翌日、母親への話では石下被告は犯行を記憶しておらず、「変な夢を見た。気付いたら部屋みたいな所にいて、何かくるまったものを、ナイフか包丁か分からないけど何かでプスプス刺した」などと話していた。

続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japan/201611233039014/




玄関の戸を開ける気配がしたかとおもうと、すぐにどどっという何かが倒れるような大きな音がした。

行ってみると、ぐでんぐでんに酔っぱらった友人が三人、重なるようにしてぶっ倒れている。

大家に見つかるとうるさいので一人づづ玄関脇の自分の部屋に引きずっていったが、 その重いことといったらなかった。

しばらく並べて寝かせておいたところ三人とも気分が悪くなったらしく、交互に縁側の方へ這っていって嘔吐しはじめた。

翌朝は多少二日酔い気味ではあっても皆おもしろおかしく昨日のことを話しはじめ たが、どうしたことか飲み屋から出てから後の記憶がてんでないというのである。

しかもである、帰りの電車賃までもすっかり使い果たしてしまっていたのに、どうやってここまで辿り着いたのか不思議でならないという──。
asahi.jpg


これは学生時代の他愛ない思い出の一場面であるが、酩酊が過ぎるとよくこのようなことがあるものである。

昔から浮世の憂さ晴らしということでは、酒は人間にとってなくてはならないものであった。

それだけに江戸時代など、時代背景や環境といったものに対して精神的不平や不満が鬱屈してくると、どうしても酒に走ることが多かったのではないかと思う。

特に昔は今と違ってこれといった娯楽も少なかったし、いわゆる封建制度の厳しい社会体制のもとでは多くの庶民が鬱屈した精神状態に置かれがちであった。

だからどうしても憂さ晴らしの飲酒量が多くなり、やがて体をこわす原因になったのである。

酔っているあいだは日頃の不満や不安から逃れられると、それこそ前後不覚になるまで呑み続けるということが多かった。

これが毎日のように続くとやがてアルコール依存症とか慢性アルコール中毒、肝臓・胃腸障害が出てくるようになるし、やがて精神にも異常をきたすようになる。


記録によると、正徳二年八月二十七日に次のような飲酒が絡んだ出来事があった。

互いに酒好きで仲のよい只介と彦六という二人の武士が犬山で刄傷事件を起こしたのである。

木曽川辺まで遊びに行ってしたたかに呑んでの帰り、ぶらぶらと街道を歩いているうちに酩酊している彦六がいきなり刀を抜いて只介の腕に切りつけた。

ところが只介も泥酔しているのでこれに気付かない。

そのまますたすた歩いていると腕から流れる血に驚き、「ややっ、汝はわれを切りたるか」と只介が叫んだ。

しかし泥酔のあまりこのこともふっつり忘れて、ぶらぶらと二人とも並んで歩いていってしまった。

そして今度は急に思い出したように只介がふらつきながら抜刀し彦六の顔面に切りつけ、切っ先が伸びて股までも切り削いだ。

彦六はそのまま路上にどおっと倒れたが、 只介もよろめきながらそのまま倒れ込むと鼾をかいて眠り込んでしまった。

しばらくして目を覚ました只介が、「──やれ彦六なんぞ臥したる、日も晩れなん、早く帰るべし」と言うと、彦六は草臥したまま起き上がれずに「汝は先へ帰るべし」 と言う。

それで只介はそのままふらふらと帰っていってしまった。

血まみれになった彦六の方は百姓に介抱され、駕籠で家まで運ばれたが疵がひどく二、三日後死亡した。

以上は尾張藩の御畳奉行の日記に記録されている事件であるが、これに類似した奇妙な事件がもう一つ元禄六年六月二九日の条にも出てくる。

「頃日、御納戸に中間三人伏し居りたり。夜半に一人の男、夢を見たりけん、ふと起きあがり、脇指を抜きて一人の男の首を切り落とし、また熟眠す。ややありて一人の男血腥きに目を覚まし、火を点しみるに、一人の男の首切り落とされ、湧血狼藉たり、大い に驚き、熟眠したる男をおこし、何が故ぞと責め問う。かの男も是をみて驚く。夢に汝 等我を切るゆえ、抜き合わせしと覚えて、その後は知らず、夢中に切り殺したるかと。終に籠(牢)に入る」、とある。

これらの事件は記録として残されているだけに、当時としても特異なものであったろう。

やはり泥酔しての刄傷事件といってもやはり尋常ではないし、睡眠中に夢と現実が混同してしまうなど、錯覚というより錯乱に近いものだし、不覚の最たるものである。

こうした事件の様相からして、多分に当時の人々が何かに抑圧されたり、鬱屈するといった過酷な状況下に置かれていたような気がするのである。

これらは所謂、発狂・精神異常とはいえないまでも、心身症、神経症といったものが背後にあるのかもしれない。

文政年間の『甲子夜話』(松浦静山)に、「人事の世に従て変ずるは勿論なり。疾病 もその時世によること一つなり。年若きものの陽症は発狂の如く、陰症は健忘労〓の如く、一種の疾あるを押しなめて、癇症とすること、近世の事なり」、とあるように精神の病をこの時代には心・気の乱れとして認識していたのである。

では癲狂・癇症とは何か。『病名彙解』(蘆川桂洲)には次のように書かれている。

癲狂・俗に云ふきちがいなり。癲と狂と少しく異なることあり。(医学)入門に云ふ、多く喜ぶを癲とし、多く怒るを狂とす。喜は心に属す。怒るは肝に属す。癇症・俗に云ふくつちがきなり、癲癇と連ねても云へり。大人のを癲と云ひ、小児のを癇と云へり。それ癇症は時に作り、時に止む。その癲狂の心を失して妄りに作り、久を経て癒えざる者と、もと一類にあらず」、と書かれている。

酒をたらふく呑んで前後不覚になったり、国会での証人喚問で都合よく健忘症になったりするものは、そうした範疇にもちろん入らない。


むかしから「酒は百薬の長」という。

その一方では、「酒は万病のもと」などともいうのである。

心して、召されよ。







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2017年09月12日

平賀源内風の昆虫観察日記紹介!?

屁ふり虫を観察する平賀源内 

今から三十数年以前の小学生のときのことであったが、朝礼での校長訓話の最中に突然バウンという物凄い轟音が講堂内に響きわたった。

その音の元は私の右横二、三メートルのところに立っていた若い女の先生であったが、すぐには一体何の音なのか分からなかった。

とにかく瞬時に音源が特定できるような音質ではなかったのだ。

後で思い出してみても、俄かにあの轟音は識別できるものではなかったとしか言い様がない。

そのときの女の先生のいくぶん紅潮して強張ったような表情を見て、やっとそれが何の音なのか気付いたという次第であった。

その轟音に驚いたまわりの生徒や先生たちに一瞬ざわめきがあったのだが、その余りの音の大きさに度胆を抜かれたのと、女の先生の気丈夫な憮然とした表情に周囲は気圧されて笑い声ひとつ立たなかった。

まさにその轟音の迫力そのものが、笑いを抑え込んだのであった。
軽やかな音であったなら、このときの状況はまったく違っていたであろうことは想像に難くない。

とにかく私自身、後にも先にもこれほどの豪快な放屁音は聞いたことがないということだけは事実である。

後日、昔話の「屁こき女房」を読んだとき、まさにこれだと体験的に捉えたのを覚えている。

こういう放屁の話題に関しては江戸時代の大博物学者の平賀原内先生が、心血を注いで書き上げた有名な『放屁論』が詳しい。

自由自在に放屁できる放屁男が出てくるその後編のさわりの一部を少し紹介しよう。

「漢にては放屁といひ、上方にては屁をこくといひ、関東にてはひるといひ、女中は都ておならといふ。
其語は異なれども、鳴ると臭きは同じことなり。
その音に三等あり。ブツと鳴るもの上品にして其形圓く、ブウと鳴るもの中品にして其形いびつなり。
スーとすかすもの下品にして細長くして少しひらたし。

是等は皆素人も常にひる所なり。
彼放屁男のごとく、奇奇妙妙に至りては、放ざる音なく、備らざる形なし。

抑いかなる故ぞと聞けば、彼ケ母常に芋を好みけるが、或る夜の夢に、火吹き竹を呑むとみて懐胎し、鳳屁元年へのえ鼬鼠の歳、春邉と梅匂ふ頃誕生せしが、成人に随ひて、段々功を屁ひり男、今江戸中の大評判、屁は身を助けるとは是ならん云々──。
」と、おかしな話が続く。 

A_PORT~1 


放屁の芸で世渡りができるとは愉快であるが、かって十九世紀末のフランスのパリの劇場(ムーラン・ルージュという)あたりで自由自在に屁を放ち、しかも音程も調節できてフランス国歌の「ラ・マルセエイズ」などを奏してやんやの喝采を浴びた男が実際にいたそうである。

なんだ馬鹿馬鹿しい、屁を題材にして下らぬ話を書きなぐってと思われる向きも恐らくあると思うが、たかが屁されど屁なのである。

屁ひとつで人生が変わってしまうこととてあるのである。
屁ひとつで不幸になる、あるいは幸運が舞い込む。

そういうこととて長い人の一生では突然出てくるはずである。
そうは思いませんか?

江戸時代の話で、一発の放屁が争い事の原因となったことが記録として残されている。
町名は書いてないが話が話だけにここではかりに、あさくさ(浅草)の近くにあった長屋としておく。

その長屋に独り者の男と夫婦ものが隣合わせに住んでいたのであるが、あるとき夫の留守中に女房が思わず大きな放屁をした。

薄い壁一枚、これを隣の独り者が聞いて、「女のくせに人間離れした放屁じゃねえか」といって嘲り笑った。

女房はこれに腹を立て血相変えて男の家に駆け込むと、「自分の家で屁をひるのが何がおかしい。余計なお世話だよ」とこれまた罵った。

二人が声高に争うのを近所の長屋の連中が集まって引き分けたので、このときはどうにか騒動はおさまった。 

ところがこの女房が銭湯に行っているあいだに夫が仕事から帰ってきたのであるが、七八歳の娘が「留守のあいだにおかしなことがあって、とてもまわりが騒がしかった」と口を滑らせてしまったのである。

「何があったんだ」と怪訝顔で父親が尋ねると、「隣のおじさんと母さんのあいだで言い争いがあったのだけど、父さんには絶対にいっちゃあ駄目といわれてるの」と娘がぺらぺらと喋ってしまったから大変である。

これを聞いて夫は、さては隣の男と女房は密かに通じておったなと思い込み心中おだやかでなく、近くの銭湯から帰ってきた女房をつかまえて激しい口論となった。

しまいには夫が出刃包丁を持ち出して、いきなり女房の頭に切り付けてしまった。

女房の悲鳴に近所の者たちが再び駆けつけて夫を取り押さえたが、このときの騒ぎで加勢にきていた隣の男までも巻き込まれて傷つけられてしまった。

公になりそうな事件であったが、訳知りの人が間に立って内々で済んだのであるが、これは放屁一発がとんだ事件に発展したという貴重な事例の記録なのである。(『耳袋』巻の七)


学名はゴミムシ科、ミイデラゴミムシというすごい昆虫がいるのをご存知だろうか。
あだ名は「屁ふり虫」とか「ヘッピリ虫、屁こき虫」とかいうやつである。

miidera.jpg


子供のころこれでよく遊んだのであるが、実に愉快な昆虫であった。

掘り返された直後の畑や田圃にいるのだが、地中から茶褐色の2.5センチぐらいの大きさのぼてっとした体型の昆虫がもそもそ這い出てくる。

これを棒の先でちょっと押さえてやるとブッといって、勢いよくお尻から噴霧器みたいに白煙を吹き出す。

押さえる度にブッ、ブッといって放屁音とともに白煙が続けて出るのであるが、次第にその量が少なくなって終いには出なくなってしまう。つまりガス切れ状態になるわけだ。

犬や鶏の放屁音ならたまに聞くことはあるが、虫ケラとなると予想外の可笑しさが伴う。
小さくとも放屁音そのものには、違いないのだから。

この白煙はおそらく自己防衛のものと思われ、指の爪にかかると黄色くなるところからこれは成分に亜硫酸成分が含まれているのかも知れない。

強い酸とたんぱく質が反応するということで、これは化学でいうキサントプロテイン反応というやつではないかと思っていたのであるが、あとで調べたら当たらずとも遠からずであった。









このガスを噴出すメカニズムが本当に凄いのである。

ゴミムシノの体内には2つの隔離されたタンクがあり、1つには原料の過酸化水素とヒドロキノンを蓄えていて、これがもう一方のカタラーゼ酵素で囲まれた反応タンクに送り込まれると一気に酸化反応が引き起こされ勢いよくガスを噴出すという仕組みなのである。

この一瞬の化学反応で噴出されるガス自体は100度以上にもなり、まともに吹きかけられると皮膚に火傷による水泡ができるらしい。

白いガス状のものは、高温の水蒸気が含まれているのかもしれない。
ゴミムシ自身は、それこそ固いキチン質の装甲で包まれているので大丈夫なわけである。

まあ、子供の頃はこういう少し危ない昆虫を相手にして遊ぶのも大層愉快なものであった。

昆虫といえどもこうした防衛力を持っていれば、そう簡単に鳥などに補食されはしないであろう。

昔は屁のことを「転失気」や「失気」といったのであるが、漢方医学では屁のことを格調をもってそう呼んだ。
屁は、屁だろうがと私などは思う。

以前宮崎の友人が、「蛇が出た」というのを自分たちのところでは「へっが出た」というと言っていたのだが、逆に「屁が出た」は何と言うのか聞き忘れた。




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posted by モモちゃん at 13:56| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月09日

古民家訪問で時代劇の世界に浸る!

古民家訪問でタイムスリップ

福岡県に住んでいて、「うきは市の平川邸」の存在はつい最近まで知りませんでした。

近くといっても意外と山深いところにあるということもあって、これまで訪れる機会がありませんでしたが、昨年短時間でしたが建物の外観を見学することができました。

今年7月の豪雨被害を被ったのかどうかが気がかりです。





RIMG2468


















うきは市の郊外というよりは、狭い山道を登っていきます。


「うきは市の平川邸」そのものは三百余年前の古民家の建築物であって、平成の時代になって国指定重要文化財になったということです。







RIMG2455




















文化財に指定された平成19年3月から6月にかけて、かやぶき屋根の全面掛け替えが行われました。






RIMG2456



















内部を見学するには事前に住人の方へ予約が必要ということでしたので、今回は急きょ訪れたこともあって残念ながら建物の外観だけを確認するだけにとどめました。

近くにはまったく人影がありませんでした。

何だかこの辺りだけ時間が止まっているような錯覚に陥ります。






RIMG2457



















すべてが古びた雰囲気です。

かやぶき屋根の型が「クド」に似ていることから、「くど造り」と呼ばれていますが、建物の内部は主家と土間の2棟をコの字型につなぎ、さらに納屋まで続くのが特徴で分棟型を発展させた型になっているとのことでした。





RIMG2458



















古風な建物だけに、どこからみても風格があります。

どこか懐かしい感じがして、一瞬まるで時代劇の世界に入り込んだような雰囲気がそこここに広がっています。






RIMG2459




















小さなくぐり戸がありました。

突然誰かが出てきそうな感じです。


とてもいい感じです。





RIMG2464



















奥のほうに別の住居があるようでしたが、夕暮れ時で挨拶もせずにそのまま失礼してしまいました。






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建物のわきには一群のコスモスが咲いていました。






RIMG2466



















この場に佇んでいると、本当にタイムスリップしてしまった雰囲気です。







RIMG2467



















道路側からみたかやぶき屋根です。

この間、10分にも満たない訪問時間でした。残念。







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2017年08月23日

江戸っ子の暮らし向きをちょいと拝見!

気ままでも厳しいお江戸での暮らし

江戸時代の一般庶民の暮らしはとても慎ましやかなものでした。

当時江戸には若い男性が多い割には市内には女性の数は少なく、思うように結婚できない若者が多かったのです。

家族を養うにはそれ相応の稼ぎが必要でしたから、経済力のない男は独身を通すしか手立てはなかったわけです。

大きく稼ぐこともなければ、大きな出費も出来ないというわけで巷では賭け事や飲酒で憂さ晴らしをしていたことになります。

娯楽といえば、仲間内での飲み会や芝居見物、相撲や見世物、寺社参り、花見といったところでしょうか。

一般庶民が出入りできるような飲み屋や食い物屋はそこここにありましたが、当時は栄養とか食事のバランスとかはまったく関心がもたれてはいなかったので、栄養失調や胃腸の疾患で苦しむ人が少なくありませんでした。

当然冷暖房設備もありませんでしたから、風邪や熱中症、急性胃腸炎(食中毒)、眼病や皮膚病などの感染症も頻発しました。

それでもまともに医者に掛かれる世帯も限られていました。

驚くことに、江戸時代の庶民の平均寿命は三十代後半でした。

当然子供たちも早くに独り立ちをせざるを得ませんでした。

高齢者がいなかったということではなく、これは衛生状態に問題があって、出産時の妊婦や新生児の死亡率が非常に高かったからです。






長屋のくらし








江戸の食事情









江戸の銭湯










モテた職業 TOP3










お江戸のお花見事情














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ラベル:庶民の暮らし
posted by モモちゃん at 17:31| 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

家康が最後に掴んだ「膃肭臍」とは一体何だったのか?

秀吉と家康の健康管理術

戦国時代にあって、徳川家康ほど自己の健康管理に努めた武将はまれであった。

他の多くの武将は戦国の気風そのままに無骨一辺で、むしろ酒色に溺れて短命であった。

命を惜しむことが恥とされた時代でもあった。

それこそ長生きするために気配りをして努力をするというのは極めて少数派であったのだ。

そうした中で家康が着実に足元を固め天下を取ったわけであるが、そこには家康独自の健康管理と長生術とが重要な役割を果たした事実はあまり知られてはいない。

当時、家康は大変な読書家であり、自ら医学書や本草書(薬学)を読んで研究していたのである。

今回、その核心部分について紹介してみよう。

御存知のように、オットセイ(膃肭臍)は強精剤としての人気は現代でも相当に根強いものがある。

強精剤というと、スッポンエキス、ベンガル虎の一物、沖縄ハブの肝、赤マムシの肝、キングコブラの肝、鹿鞭を尻目に、まずはこのオットセイの一物というわけで、中国の有名な至宝三鞭丸、海馬三腎丸などにも処方されている。

そこで気になってくることであるが、わが国にこのオットセイの効能が伝わったのは一体何時のことであろうか。

時代を遡っていくと、まずは最初に戦国武将徳川家康(一五四二〜一六一六)に行き着くことになる。


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というのは家康は殊のほか本草学に熱心であり、中国朝鮮の医学書をいち早く入手して研究していた実績があるからである。

しかも当時としては珍しい薬草園までも作っており、家康の遺品には薬物や調剤道具が沢山残されていた。(駿府御分物御道具帳

『本草綱目』や『和剤局方』を独自に研究していたし、613年当時朝鮮で刊行された『東医宝鑑』にも逸早く目を通していた。

とにかく家康はこの分野においてはひどく研究熱心であった。

実はこれらの医書には、膃肭臍(オットセイ)の補腎薬としての効能や処方が薬物情報として書かれていた。

このことに家康は気付いたはずである。

史料を見ると家康が六九歳の時(1611年)に、蝦夷の松前藩主松前慶広に海狗腎(オットセイ)を捕獲し献上するように命じている事実があるが、時系列からいけば確かにこのときすでにこれらの医書からオットセイの薬効情報を掴んでいたということになる。

さらにいえば、家康は捕獲の命令を出す前に海狗腎(オットセイ)の実態をしっかりと特定していたということがいえるはずである。

ここが非常に重要である。

何故ならば、それまで日本では誰もこの海狗腎(膃肭臍)に注目などしていなかった。

存在さえもあやふやであったのだ。

家康より後は、にわかに海狗腎(オットセイ)の薬効が世間一般にも知られるようになり、江戸時代を通じて市中でも大いに強精剤としての人気が集まったという経緯があるのだ。

それも江戸庶民の川柳の題材にまで登場するくらいだから、市井の注目度は相当なものがあった。

 ・
始皇帝 おつとせいとは 気がつかず
 ・おつとせい 転ばぬ為の 薬の名
 ・松前の 矢で射た 腎薬
 ・効能で 女房よろこぶ 夫ト勢
 ・薬食いでも 後家はいましめ おっとせい


ここで腎薬(強精剤)とくれば、あの腎虚(萎縮腎説、老人性肺結核説がある)で倒れた戦国の覇者豊臣秀吉はどうであったろうか。

こうなるとこの腎薬オットセイの存在を天下人の秀吉が知り得たかどうかが気になるところである。



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この点についても早速あれこれと調べてみたというわけである。

ポルトガル宣教師として1563年来日したルイス・フロイスの著した『日本史』によれば、秀吉は大阪城内に参百人のお手付きの側女をおいていたというから、これが重要な傍証となる。

後年秀吉は延命を願って没薬(もつやく)を服していたが、これとて天下統一後の権勢とは裏腹に衰える体力の回復に、それこそやっきになっていた証拠でもある。

秀吉は地下人もしくは百姓の出ということもあって、民間医療の灸治療や温泉(有馬)の効能もよく知っていた。

親しかった前田利家とはお互い灸をし合ったという逸話は有名である。

その上、精力増強のために当時としては宣教師の薦めたこともあって、珍しく牛肉や生玉子を食らっていたし、一方で虎肉が良いと聞けば朝鮮出兵中の島津義弘らに塩漬けの虎肉を送るように厳命していたほどである。

これに答えて武将福島正則は虎を討ち取り、塩漬けにした虎肉を秀吉のもとへ送り届けている事実がある。

その後も秀吉の下へ続々と虎肉が送られてきた結果、もう送らずともよいとの伝令が出されたほどであった。

こうなると朝鮮出兵の目的には、意外とこれらの珍奇な薬物や大陸あたりの精力剤の入手が絡んだものだったかもしれないということになってくる。

晩年になると秀吉は足腰がふらつき、ついには城内でお洩らしまでするようになり、本人はもとより側近あたりの強壮剤捜しは避けられない事態となっていた。

この当時、いわゆる老人の失禁などは腎気(生命力)の衰えとみられたのである。
 
関白職を甥の秀次に譲る時、書状でもって「茶湯、鷹狩り、女狂いなど一切秀吉の道楽の真似るなかれ」と、厳しく生活態度を訓戒したほどの秀吉であり、もとよりかっての主君織田信長が呆れ返るほどの女好きであったからどう転んでも腎虚だけは避けようもなかった。

ここらは自業自得である。

本題の膃肭臍(膃肭臍・オットセイ)であるが、中国方面ではすでに八世紀前半には薬物情報として外部から入って来ていたらしい。(『和漢薬』百九十六号・三浦三郎)

意外なことにオットセイに強壮効果があるとの医薬情報自体は、アラビア半島の中東方面から海か陸のシルクロードを通じてはやくに中国方面に伝播してきていた。

となると時代的には鎌倉時代に伝わっていた『和剤局方』からの情報か、さらには中国で直接宋医学を学んだ医師の田代三喜あたりから腎薬オットセイなるものの薬効は確実に日本にも伝わっていた可能性はあることになる。

勿論、情報通の秀吉自身こうした珍奇薬への特別な関心ははじめから側近のお伽衆や医師達へ向けられたことは十分考えられるところである。

側に仕えた筆頭侍医の施薬院全宗や侍医に近い立場にあった曲直瀬道三(中国に留学して李朱医学を学んだ田代三喜の弟子)、海外の薬種も手広く扱っていた堺の小西家からもそれらの情報は入っていたかもしれない。

しかも秀吉は天下統一後は健康面であれこれと不安を抱えていたから、当時の最高水準の医師団を傍近くに置いていた。

そうした中、当時の名医として名高い竹田定加や半井瑞桂らの番医はもとより多くの名医の治療を直接受けたことで、たぶん海狗腎(オットセイ)情報も彼の耳に端に入っていたことも考えられる。

しかし薬物情報と現物の入手とはまったく別次元のものであるということをここでは考慮しておかなくてはなるまい。

ここで重要なことは、海狗腎(オットセイ)なるものがこの時代はっきりと海獣の「オットセイ」だと特定されていたかどうかが非常に疑わしいのだ。

疑わしくもあり、実に曖昧なのだ。

強壮剤としての薬効があるという海狗腎(膃肭臍)とはどんな生き物なのか、意外なことに当時の医療に携わる薬師・医師らはもとより巷の日本人の誰もがその実態を知らなかったのである。

海にいる大きな海獣、あるいは海魚というレベルの認識であれば、海豹やトド、あるいは鮫や鱶も該当するやも知れず、それこそ誰も「オットセイ」なるものを特定することができなかった。

それこそ当時は現物と医薬文献との間でその情報が一致しない事例はいくらでもあったのである。

学者はその名称や存在自体は知っていても肝心の現物そのものは実際には見ていないこともあった。

当時でも動植物のいわゆる生薬(しょうやく)というものを特定する作業はもちろんのこと、その生薬としての効能の善し悪しを見定める選品作業というものは専門的な知識と経験が必要であっただけに、それこそ一夕一朝に解決できる問題ではなかったのだ。

事実、当時最新の中国(明)の薬物書として刊行されたことで有名な『本草綱目』でさえ、そこに描かれている膃肭臍(オットセイ)の図録は巨大な怪魚そのものなのである。

当然ここからオッセイにつながるような情報は得られなかったはずである。

ということは、『本草綱目』の編著者である李時珍でさえもが実際のオットセイを見たことはなかったということになる。

加工された「海狗腎」は目にしたかもしれないが、膃肭臍の全体像はどこまでも怪魚であったということになる。

怪魚と「海狗腎」とでは絶対にふたつは結びつかない。

当時の『本草綱目』が膃肭臍をどのように表示していたのか国会図書館のアーカイブでようやく探し出してきたのでご覧あれ。

これで『本草綱目』に紹介されている膃肭臍がいわゆるオットセイなるものに見えるかという点を確認していただきた。

オットセイに鱗があるのかということである。



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ここで厳密にいえば、生前秀吉はこの『本草綱目』に描かれた「膃肭臍」なるものの絵姿さえもを目にはしていないし、それは叶わなかったのだ。

というのは『本草綱目』が明の李時珍の手によって完成したのが1578年当時であるが、日本に『本草綱目』が実際に輸入されたのは、江戸幕府が開かれたずっと後年のことであった。

しかも当時でさえ『本草綱目』は、容易に国外に持ち出されるような部類の書籍ではなかった。

第一、この時代明国は日本との直接の交易を断っていた。

そうした状況下にあって1607年にようやく長崎で林羅山が『本草綱目』を入手して、始めて家康に献上したわけであるから当時でもなかなか入手できない貴重かつ高価な稀覯本であったことになる。

ここではじめて家康が権力者として「膃肭臍」なるものに最も早く注目したという明確な経緯が判明してくるということになる。 
 
さらに留意しておかなくてはならないことは、たとえ貴重な文献が入手できたとしても薬用としての「オットセイ」の特定作業と実際にそれの捕獲に繋がらなくては意味はないことになる。

結局現物を入手するにも膃肭臍(オットセイ)という海獣の特定ができて初めてそれが可能となる。

これが実現したのは権力者としての家康の絶大な権力が発揮されたからであり、そこには卓越した彼の情報収集力がものを言ったといえる。

幸いなことに、家康にはそうした海外情報を齎してくれる有能な人材がブレーンとして身近に存在していた。

彼の元には明から渡来してきた医師団がいたことはすでに拙論でも紹介したところである。

さらにウイリアム・アダムスやヤン・ヨーステンのような海外情報に通じた西洋人さえもがいた。

家康は自ら彼らに問いただし、特定作業に繋がる情報を得たことであろう。

そうなるとここは偶然などということではなく家康にとっては必然的な流れがあったわけで、すべては入手するべくして確実に己の手で掴み取ったということになるのではないか。

ここらが家康の本来の凄さであり、その実力に見合った強運というべきところである。

要するに、家康のもとにはオットセイを特定できる人間がいたということである。

ここから「膃肭臍」とオットセイとが特定され、ふたつが見事につながることになる。

オットセイは哺乳類食肉目アシカ科の海獣であって、北太平洋のアラスカ周辺や千島列島付近にまで生息しており、特に冬季には本州中部当たりまで回遊するという生態でもあるから、当時の日本人にとってまったく未知の動物というわけではなかった。

オットセイは繁殖期になるとより強い遺伝子を残すために、強い一匹のオスが多くのメスを独占し、大きなハーレムを形成する動物ということからみれば、誰が観てもその強壮性そのものは理にかなっていよう。

しかもそれが権力者が欲しがる最高の補腎薬とは、家康自身が気付くまでは日本人の誰一人として気付く者はいなかったのである。

ここに家康の本当の凄さがある。

というわけで天下人秀吉のもとではオットセイの実体そのものはすこぶる曖昧なままで、捨て置かれていたということになる。

それこそ国内の既存の本草書にいくらかそれらしき記載はある。

だが肝心のオットセイなるもののはっきりした特定はいまだ出来ておらず、いくばくかの情報の片鱗はあったとしても結局秀吉の時代では海狗腎そのものの入手は不可能だったということになる。

たとえ海狗腎なるものに天下人秀吉が強い憧れを抱いた補腎薬であったとしても、さすがにオットセイの特定がされるだけの確かな情報が彼のもとでは揃わなかったということになる。

結局のところ秀吉は海狗腎の入手に間に合わず63歳で逝去、家康はオットセイ入手に間合い見事にセーフ、75歳までしたたかに延命し天下を掌握したということになる。

しかもこの間に家康は生涯子供を18人ももうけたのである。

あの世では、秀吉が地団太踏んで悔しがったことであろう。

まあそれでも秀吉自身は、当時の名医曲名瀬道三自身も晩年愛用していたという人参入りの理中丸や補中益気湯ぐらいなら、精力回復を願ってせっせと服用していたのかもしれない。

本稿では、精力剤の効果を吹聴しているのではない。
むしろこうした薬物に頼ってしまうのは逆効果であろう。

強精剤はやたら弱った体をむち打つものである。

これによって精力が一時的に増してもこれは直ちに延命に繋がるものではない。

限りある命を精力増強に振り向けるわけで、肝心の生命力そのものが損なわれることもある。

この辺りも家康は賢く対応していたということがいえよう。








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